94年度北海道AALA定期大会議案

第一章 世界情勢をどう見るか

【はじめに】

93年度の報告を書いてからわずか1年ですが,この間にも世界は猛烈な勢いで変化を遂げています.


日本では,国民の大多数の反対を押切って自衛隊がカンボジアに派遣され,軍隊の海外派遣が既成事実化されつつあります.さらに,憲法改悪により軍隊の派遣そのものを合憲化しようと小選挙区制のたくらみを打ちだしてきました.まさに自体は容易ならないところにきています.


今度の北海道AALA総会は,こうした緊迫した情勢のもとで開かれていることをまず確認する必要があるでしょう.


アジアの,そして世界の人々が,日本の軍国主義復活を心配し,わたしたちの憲法と民主主義を守る運動を注目しています.政府や大企業の「国際協力」がアメリカへの奉仕であるのなら,わたしたちの運動は,太平洋戦争のあやまちをくりかえさないという決意を込めた,アジアと世界の平和に対する奉仕となるでしょう.

 


第一章 激動の一年

ここ数年,世界はまさしく激動のさなかにあります.


そのきっかけとなったのは,89年の天安門事件に始まる社会主義諸国での民主化運動の高揚でした.中国ではその試みは軍の砲火の前に挫折したものの,次いで東欧を襲った民主化運動の嵐のなかで,ソ連追随と官僚主義,民主主義抑圧の姿勢をとりつづけた国々がつぎつぎと打ち倒されていきました.

91年夏,官僚支配の復活をねらったクーデターがソ連で失敗すると,革命の原点を忘れた覇権主義の大国はもろくも崩れさり,第二次大戦後40年にわたった社会主義世界体制は事実上消失しました.その後今日まで1年半,各地で地域紛争が勃発し,世界は騒然たる雰囲気のなかにあります.


一方において,金持ち優遇と軍事優先の政策を強行してきたブッシュが,国民の反感の前に倒れ,他方においてはクーデター失敗のあと権力を掌握したエリツィンが,アメリカにものもらいのように擦り寄りながら,自国をますます混迷の底にひきずりこもうとしています.


このような激動の世界をどうみたらいいのか,世界の人民はどのように団結し,あらたな世界秩序を構築していけばいいのか,わたしたちは真剣に考える必要があります.

(1)支配者の変化


この間の変化のなかでもっともはっきりしているのは,世界を軍事力により支配するものが変わったことです.これまではアメリカとソ連が世界の覇権を争っていましたが,ソ連の崩壊によりアメリカが唯一の超大国として世界に君臨することになったのです.


同時に強調しなければならないのは,アメリカがソ連との競争に勝ったわけではないことです.むしろ事実は,両者の共倒れというほうが正確でしょう.クリントンは2月の一般教書のなかで「過去4年間とおなじ傾向を続ければ,90年代の終わりには赤字はGNPの80%となる.いま行動しなければ,現在の統治制度さえ10年後にはなくなってしまうかもしれない」と訴えています.(解説一)

これらの事実は,世界支配体制の破綻の原因が,あれこれの社会経済システムの問題ではなく,まさしく軍事費による国民生活破綻にあることを物語っています.

アメリカ国民が,冷戦体制にしがみつくレーガン・ブッシュの軍拡路線を拒否したのは,ソ連・東欧の人々が覇権主義の政府を拒否したのとおなじように,平和と生活向上をもとめる声の反映としての意味をもっていると考えるべきでしょう.人民の運動が,世界を変えるうえでも,あたらしい世界秩序をつくりあげていくうえでも決定的な力をもっているのだということが,一連の変化のなかに反映していることを見てとる必要があります.(解説二)

(2)人民の変化

ソ連・東欧の政権が崩壊した際,「冷戦」が終結したとして,世界にバラ色の状態が生まれたかのように考える傾向が,人々のあいだに生まれました.「平和の配当」として,浮いた軍事費が援助にまわるのではという受け身の「幻想」をもつ傾向もありました.

その後2年を経過してこの考えが間違いだったことがはっきりしてきました.

前回の報告では予報的にしか触れられませんでしたが,92年8月ジャカルタで開かれた第10回非同盟諸国首脳会議は,これらの傾向を実践的に打ち破り,世界の平和と発展がどのように実現できるのかを世界に向けて提起した点で画期的なものでした.わたしたちはこの会議から大いに学ばなければなりません.(解説三)

このように民族の自決と平等をもとめるAALA諸国のたたかいは,ふたたび高まりつつありますが,一方においてこれまで民族解放運動を担っていた勢力のあいだには旧ソ連の覇権主義とこれにたいする追随主義という「負の遺産」がいまだに強く残っています.このためにあらたに唯一の超大国となったアメリカ帝国主義に対する有効な国際的統一戦線が形成されない状況が続いています.(解説四)

また,ソ連覇権主義のクビキから逃れてあらたに自立をかちとった民族のあいだでも,資本主義への幻想を再建の基本におくためにさまざまな混乱が生まれています.

民主主義の未発達のために,極端な民族主義の主張が武力により押し通される事態もあいついでいます.覇権主義の野蛮な再現ともいうべき,ミニ覇権主義は世界の各地で一種の逆流現象として混迷をもたらしています.

(3)国際統一戦線の形成に向けて

いま世界の大多数の人々にとって,平和を脅かし生活を苦しめ権利を奪っている最大の原因が,先進諸国の大企業,多国籍企業にあることはいうまでもありません.それらは政治的代理人として各国政府を指名し,支えています.

各国政府はG7や先進国サミットなどを組織し,軍事大国としてのアメリカを支えています.アメリカは唯一の超大国として世界を支配し続けようとしていますが,その戦略の根底にあるのは,依然として冷戦型思考であり核抑止戦略です.(解説五)

これに対し,多国籍企業の横暴に民主的規制を加え,あらたな国際経済秩序を確立し,AALA諸国をはじめすべての国の経済と社会の安定的発展を実現することが緊急の課題となっています.平和なき発展がありえないのと同様に,発展なき平和がありえないということは,非同盟諸国のあいだでは痛切な教訓となっています.(解説六)

この課題の実現のためには,「世界の憲兵」をめざすアメリカの力による支配の戦略を打ちやぶらなければなりません.とりわけその戦略の核心となっている核抑止戦略をやめさせ,核兵器の廃絶に向けて国際的な統一戦線を形成することが,焦眉の課題となっています.それは,人類を絶滅させ,地球を死んだ天体にしてしまう危機から逃れるための唯一の方法でもあります.

アメリカを先頭とする先進国が,発展途上国とのあいだにかかえる南北問題はますます深刻となっています.先進国と発展途上国の所得格差は80年代に15倍から23倍へと拡大し,人口の8割がすむ途上国では11億以上の人々が一日あたり1ドルの生活を強いられ,8億人以上が飢餓状態にあり,毎週25万人以上の子供が死んでいます.

アメリカではどうでしょうか.この10年で貧困ライン以下の労働者が12%から18%に増える一方,人口の1%に過ぎない大金持ちは所得が2.2倍に増えています.

先進国と低開発国とを問わず,世界の人民が連帯して,アメリカを先頭とする世界の支配者に対して平和と発展,民族自決と民主主義の実現をめざした運動を巻き起こすことがいまほど重要になっている時はありません.

わたしたち日本の連帯活動家は,唯一の被爆国であり,国民主権のもとに戦争を放棄し平和的手段により世界の発展に貢献するという憲法をもつ国の国民として,その運動をさらにひろげましょう.

 

第二章 国連の民主的運営を

めぐる問題とカンボジア


(1)国連利用をねらうアメリカ

クリントン新政権は,レーガン・ブッシュの路線を忠実にひきついで,世界の支配者としてのアメリカの地位を今後とも保ち続ける姿勢を示しています.就任演説ではこういっています.「アメリカが世界をひきつづきリードしなければならないのは明白である.われわれの死活的な利益が挑戦を受けるなら,あるいは国際社会の意志と良心が拒絶されるなら,そのときわれわれは行動する.可能ならば平和的外交で,必要なら武力を用いて」


それと同時に,そのための軍事費を同盟諸国に肩代わりさせようとする姿勢を一段と強めています.
そのために国連を利用し,みずからの道具にしようとする意向を示しています.そしてそのことによって国連の権威を利用するだけでなく,ほかの国にも軍隊を出させたり財政の負担もさせたりするつもりです.一方において,国連がみずからに不利な決定をおこなってもそれを遵守する気はなく,必要ならひとりで軍事力を使ってやると宣言していることもたしかです.
これがクリントンの新戦略のねらいであり,国連のありかたをどうするのかが,いま世界のあらたに秩序をつくるうえでの主なたたかいの場になっていることの説明でもあります.
(2)危険をはらむガリ構想
カンボジアやそマリア,モザンビークと,国連のありかたをめぐる問題が連続しています.そのなかで注目されるのが,ガリ国連事務総長の一連の発言です.
一般論として指摘しておかなければならないのは,アメリカも日本も世界の警察官にはなれない.国連だけがなれるのだということです.そのためにも国連の機能を民主的に強化しなければならないことも事実です.ガリ総長がこのことを強調するのは正しいことです.
しかし肝心なのは,ガリ総長の考えるように米日独を重視しその力によって国連を強化することが,真の国連強化につながるかどうかということでしょう.
ガリ総長は,アメリカのほかに日独を加えた三極構造により,国連の力を強化しようとしています.そのために日独の憲法改正,軍隊の海外派遣を要請しています.ところがこの構想は,彼の思いは別にして客観的に見れば,クリントンの新戦略とぴったり一致しています.
アメリカは自分の思うままになり,自分に都合のよい範囲でのみ国連を利用するつもりです.そうなると,ガリ事務総長の構想は,国連強化の名のもとに,大国の覇権主義に利用されるだけではないのだろうか,そういう疑問がもたれても仕方ありません.
(3)国連憲章の精神をまもり発展させる
ガリ報告に対しては,米日をふくめ国連の大多数が支持を表明しています.また昨年の非同盟諸国会議でも「時宜にかなった貢献である」と評価されています.
しかし非同盟諸国首脳会議では,ガリ報告に対する積極的評価と同時に,重大な条件をあげています.「国連にはあたらしい公正で平等な世界秩序を構築する主要な集団的機関」であるべきで,そのために「国連機構の再活性化,再編,民主化」が必要であり,非同盟諸国はこれに向けて「指導的役割をはたす決意」であると述べています.
問題の根本はまさにそこにあります.そしてガリ構想への評価も,それが国連の民主的強化に役立つのか,あるいは米日独の世界支配をめざす野望を助ける結果になるのかという視点からおこなわれるべきでしょう.すくなくとも日本に対するガリ総長の「改憲」と自衛隊の海外派遣要請は,後者の方向に拍車をかける結果としかなりません.
非同盟会議最終文書では,「一極的世界の傾向にふくまれる危険は,今日の全地球的問題の解決の見通しを制約しかねず,すべての国家の主権の平等という基本原則に対して現実の脅威をもたらしかねない」と指摘しています.
まったくあらたな世界の情勢にあわせて,国連を超大国の世界支配の道具にしてしまうのではなく,国連憲章の精神を発展させ,すべての国の平等な主権の原則にのっとった公正な国際秩序,安定した平和と共通の安全保障を実現することが,世界の民主勢力の差し迫った課題となっています.
日本国憲法は,国連憲章と併せて読む時,いっそうその輝きを増します.過去の戦争に対する反省,唯一の被爆国として世界平和に貢献する決意をこめ,憲法の精神を守り発展させましょう.

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