1998年度

AALA総会情勢報告

【はじめに】

98年も残り少なくなってきました.ソ連・東欧の崩壊に続く激震は依然治まらず,新たな世界秩序が形成されるのは次の世紀にもつれ込みそうです.

目下のところ米国の一人勝ちのような状況を呈していますが,実体としては米国の勝利というよりも国際金融資本が支配権を握り,その流れがとりあえず米国に集中しているだけです.

その結果がもたらしたものはあまりにも深刻です.世界中の経済が収縮しています.とりわけ途上国,最貧国には激烈な影響を与えています.

国際金融資本にとっても世界経済が収縮することは,結局は自分の首を絞めることになります.このような無政府的な「自由主義経済」が人類をどのような方向に導いていくかは明らかです.

平等・互恵の原則に基づく新しいパートナーシップ,国際金融資本の横暴を許さない,新しい国際秩序の確立が求められています.そのためにも,世界支配を図るアメリカの覇権主義を許さない国際的な連帯がますます重要になっています.

 

1.アメリカの覇権主義がますます露骨に

ガイドラインの意味

「ナイ構想」に基づきアジアに軍事=経済覇権を確保しようとする米国にとって,日米ガイドラインは鍵となるものです.近代戦にとって即応能力が決定的であることは言うまでもありません.即座に大量の物資を補給できることが勝利のための大前提です.このことが何を意味するのかは,すでに三年前の北朝鮮の核疑惑*,昨年の台湾海峡での緊張をめぐる米軍の行動が物語っています.

さらに今回,インドネシア政変時に沖縄駐留米軍のとった一連の行動*も,即応能力が何を意味するかを雄弁に物語っています.

アジア人民にとって日米安保とガイドライン改訂は,平和と安全を脅かす最大の元凶です

さらにもう一つの当事国である日本にとってもガイドライン改訂はきわめて危険な内容を含んでいます.それは(1)アメリカの無法な干渉戦争に日本を自動参戦させるしくみであり,(2)自衛隊の出動に対して国会の承認を排除しており,(3) ほんらい憲法が禁止した戦争行為そのものも日本が引き受けるしくみであり,(4)その対象範囲とされる「周辺」とは,事実上無制限,無限定だということです(日本共産党の最近の決議から引用).

 

アメリカの無法な干渉

なかでも,最近の動きに照らし合わせたときもっとも危険と思われるのは,クリントンの一連の無法行動です.彼は「ならず者国家」やテロリスト集団に対して,国際的な常識を無視した攻撃を行っています.みずからのセックス疑惑に対する非難をそらす目的で,恣意的に「敵」を作り出し強権を発動したとすれば,これほど恐ろしいことはありません.

核のボタンを握り,世界を何回でも絶滅に追い込むことのできる男が,個人的な目的のためにその力をもてあそぶのなら,そもそも国際秩序などというものは無きに等しくなってしまいます.まさにクリントンこそ「ならず者」といわなければなりません.

しかも今回の行動にあたっては,標的がテロリストのアジトだとする確証を持っていなかったことが明らかになっています.スーダンの「爆弾工場」は,実はたんなる薬品工場でした.アフガンでも巡航ミサイルの不発弾が多数見つかっており,ピンポイント攻撃どころかほとんどめくら撃ち(差別用語?)に近い攻撃だったことが明らかになりつつあります.

国家の主権をまったく無視した無法な攻撃に対し,国際的な非難の声が上がっています.この攻撃に「理解を示した」のは日本くらいのものです.非同盟諸国首脳会議の最終文書では次のように述べられています.

  • (首脳会議は)すべての一方的な軍事行動や,民族の尊厳,領土の保全,独立に対する軍事的干渉を,きっぱりと拒否することを再確認した.なぜならそれらの行動は相互不干渉,不可侵の原則に対するあからさまな攻撃だからである.この立場から(首脳会議は)特定の非同盟国家をねらった一方的な軍事行動を強く非難する.
  • 日本軍国主義の危険

    世界における平和の安全の敵は言うまでもなくアメリカですが,日本政府の役割も決して少なくありません.すでに日本の軍事力は東アジアにおいて圧倒的なものとなっています.

    東アジアの軍事費

      95年度予算(ドル)
    日本 540億
    中国

    台湾

    74億

    100億

    韓国

    北朝鮮

    タイ

    144億

    22億

    26億

    アジア諸国計 約450億

     

    しかもその軍事力は米軍と有機的に統合されている分,より攻撃的なものになっています.6月の国会で法制局長が「核兵器の使用も,我が国を防衛するための必要最小限にとどまるならば可能」と答弁しています.またガイドラインをめぐる国会での議論で明らかになったように,台湾海峡を安保の対象としています.これは明確に「一つの中国」の否定であり,武力による内政干渉そのものです.

    2.米国の経済覇権主義がもたらしたもの

    対日関係に見る米国の覇権主義

    79年の第二次オイル・ショックの後,日本は深刻な不況に陥りました.日本はこれを対米輸出にドライブをかけることにより脱却したのです.いわゆる集中豪雨型輸出です.この間労働者は不況だということで低賃金のまま置かれ,労働強化と下請けへの犠牲転嫁によって,独占資本は資本蓄積と設備投資競争を行いました.このから福祉切り捨て,カンバン方式といわれる下請けいじめが始まったのです.一方で,労働生産性は一気に向上し,ヨーロッパ諸国を上回る世界第2の生産大国になっていきます.

    レーガン,ブッシュと続く米国の貿易自由化,赤字垂れ流し政策も,日本の輸出を大いに伸ばす結果となりました.他国に米国製品の押し込みを迫る「自由化」政策が,日本に対しては逆に輸入を増やすことになったからです.

    米国はまず,対日貿易に「ダブル・スタンダード」を設けることで対抗を図りました.世界に向かって主張する基準とはまったく逆方向の「保護貿易」を主張したのです.「自主規制」の押し付けに始まり,ダンピング法などの国内法適用で脅迫し,ハリウッド映画が国内の反日感情を煽りました.

    次の米国の反撃は,為替の操作です.85年にG5蔵相会議で円高誘導が合意されました.有名なプラザ合意です.プラザというのは会議の行われたニューヨークのプラザ・ホテルのことです.確か一気に100円以上下がり,ニカラグアに行ったときのトラベラーズ・チェックをそのままにしていた私もだいぶ損をしました.

    日本はこの第一次円高不況を新鋭の機械・設備による高付加価値商品の開発と情報産業への転化,大規模な公共事業でしのぎました.膨大なドルが日本に流入し,バブル経済の到来です.一方米国はドル安時代を迎えたにもかかわらず輸出は増えず,資本は国外流出し,産業の空洞化がますます進行しました.街には麻薬中毒者とホームレスがあふれ,もっとも豊かな都市ロスアンジェルスでも大規模な黒人暴動が発生します.

     

    軍事経済化と自由化押し付け

    このままでは米国の命運も尽きるかと思われたとき,ソ連・東欧の崩壊という世界史的な大事件が起こりました.それに続いて世界各地でミニ覇権をめぐる紛争が続発します.米国はこれらの事件を奇貨として軍事経済に活路を求めていくことになります.

    その典型が湾岸戦争でした.米国は「ならず者国家」概念を作り上げ(確かに当時のイラクはならず者といわれても仕方のない国でしたが),在庫一掃の華々しい花火大会をぶち上げました.そして日本にその費用しめて80億ドルを負担させたのです.

    軍事的覇権を背景に経済覇権を獲得する,という戦略がクリントンの新戦略の中心となりました.ナイ報告はその集大成とも言うべきものです.

    軍事経済路線とならぶもう一つの戦略が,ウルグアイ・ラウンドによる貿易・資本の自由化でした.アメリカは二重基準を世界に押し付けました.すべての国に「例外なき関税化」を迫り,さもなくば国内法のスーパー301条を適応するといいながら,自分の国に都合の悪い品目については二国間交渉で保護貿易を続けるという矛盾です.もう一つは,知的所有権の名目で他国の製品開発を禁止して自国の権益保護を図るという,形を変えた保護主義です.このような横車を押し通そうとするなら,結局はその圧倒的な軍事力にものを言わせるしかありません.

     

    金融自由化とグローバル化

    最近これらと並んで,米国の攻勢の特徴が資本・金融の自由化の押し付けです.

    70年代後半にオイルダラーとして出現した過剰流動資本は,80年代に入るとユーロ市場として急成長していきます.現在では,それはすべての国の市場を上回り,事実上世界を制覇しています.

    かつてラテンアメリカの経済をぶち壊した投機資本は,90年代に入るとイギリス政府と正面対決しました.欧州経済統合に向け『為替相場メカニズム』(ERM)防衛を図る政府にポンドを売り浴びせ,国家財政を破滅の瀬戸際にまで追い込みました.*そして今度はついに世界経済の牽引車とまで謳われた東アジア経済を危機に陥れました.

    ユーロといっても現住所がロンドンだというだけで,その内実はアメリカの多国籍企業とモルガンなどの金融機関との複合体です.国家・政府による統制を受けないこの市場に,世界中の資金が集中しています.今や先進国といえどもユーロ市場からの資金調達抜きに財政を維持することはできません.国際債の83%をユーロ市場が引き受けているのが現状です.

    そこは無法地帯であり,資金は短期の利益を求めて激しく動いています.「ポートフォリオ」などさまざまな金融テクニックを身につけた,ヘッジファンドなる相場師が市場を動かしています.資金は利子生み資本や投機資金としてとどまりつづけ,直接投資や生産にまわることはありません.息の長い投資が必要な途上国に対する国際投資は激減しています.ユーロ市場で引き受けた(貸し出した)国際債の内訳を見るとOECD諸国が89%なのに対し,非OECD諸国はわずか7.5%にとどまっています.

    このような国際投機資本の横暴ぶりを許しているのはアメリカ自身です.国際決済通貨であるドルの発行権をもつ米国は,投機資本の動きを利用しながら,垂れ流したドルの国内還流を促してきました.その見返りに国際金融の自由化を各国に押し付け,投機資本の「自由な活動」を政治的に保障しています.そして金融技術での優位を武器に世界経済を牛耳ろうとしています.いわば「金貸し国家」としての肥大化です.

    これはほんとうのところ米国自身にとってもためになるかどうか分からない,場合によってはパンドラの箱を開けることになり兼ねない危険な選択です.それは世界の金融機関のカジノ化であり,「高利貸」化です.

     

    新国際経済秩序の構築を求める運動

    国際金融資本が世界経済を支配するようになるにつれ,途上国への投資もその形態を変えました.かれらは直接投資というようなかったるい手段では満足しません.もっと手っ取り早い現地企業の買収が投資の対象となりました.これらの投資は会社の名義を変えるだけで,その国の設備投資や生産力向上には結びつきません.本来その国に蓄積されるべき富に対する収奪だけが強化されることになります.

    途上国ではいま国有事業の民営化が盛んです.しかし国家の指導性を放棄する民営化は,たとえ当座の国家財政を救えたとしても,その国の富を売り渡し,いっそうの経済収縮をもたらすに過ぎません.

    破産した途上国にはIMFのきびしいコンディショナリティーが待っています.国家,民族としての自主性は失われ,多国籍企業と金融機関の属国と化します.国家経済は収縮し,国民の生活と福祉は極限まで切りつめられ,失業率は50%を超えるようになります.犯罪は日常茶飯事となり,麻薬マフィアがはびこり,誰も道端の死体に驚かなくなります.

    これが21世紀を目前にした世界の現状であり,今後それはさらに深刻化する可能性が高くなっています.このような世界同時不況をもたらしたのは,米国とそれに寄生した国際投機資本です.いっぽう,これに対抗しあらたな民主的国際秩序をもたらすのは,先進国の民主的運動と途上国の連帯以外にはありません.AALA人民連帯委員会はそのような役割の一端を担っていくことになるだろうと思います.

    3.ダーバン会議に見る非同盟運動の急進化

    途上国にとってかつてなくきびしい情勢の下で第12回非同盟諸国首脳会議が開かれました.その最終文書は,とりわけ経済問題をめぐって先進国に対する強い批判が展開されています.カルタヘナ総会でもまだ残っていた「冷戦終結=一路平和」論や「平和の配当」論はすっかり影を潜め,ジャカルタ会議で色濃く打ち出された南南協力や途上国共同市場構想などの「シコシコイズム」も一掃され,先進国との対決姿勢が明確になっています.

    文書はまず,ソ連崩壊後の流れについて次のように述べています.

  • 二極体制の崩壊は正義の恒久世界平和への希望をもたらした.しかし正義と平和は実現しなかった.その帰結はさらに厄介な政治的,軍事的一極体制であった.新システムはさらなる不平等と不正義,そして複雑で不安定な国際情勢へとつながっていった.

    今日,この地球が安全と正義の土地とはとても言えない.煮えたぎるような衝突,暴力的争い,他国への攻撃,侵略,内政干渉,覇権と支配権をめざす政策,人種間の反目,宗教的不寛容,外国人排斥,新たな形の人種主義と偏狭な民族主義,これらすべてが重要で危険な障害物となって,国家や人民の協調と共存を妨げている.そして国家や社会の解体すらもたらしている.

  • ついでこのような混乱をもたらしたものとして大国の横暴と身勝手さをあげます.

  • いくつかの大国は,自分たちの政策や文化・社会的規範を世界の規範のように考え,途上国に一方的に押し付けている.このために彼らは,さまざまな口実の下で経済的強制,内政干渉,軍事力による脅迫,経済封鎖と差別をおこなってきた.そして,そのことによって途上国における権益を永続化しようと考えている.途上国は,これらの一方的,多角的干渉主義の犠牲者である.この間途上国は,大国の干渉により,非同盟運動と国連憲章の原則に背くことを強制されてきた.
  • 会議の関心は,とりわけ最近の大国による経済支配の強化と国際経済状況の悪化に集中しています.

  • (グローバリゼーションは)途上国の経済に対して否定的な衝撃を与えつづけている.途上国の輸出は先進国のさまざまに形を変えた保護主義によって妨げられている.彼らの発展への努力は,法外な対外債務と気まぐれでわずかな短期資金の流れにより傷つけられている.そしてその結果もたらされた技術の遅れにも苦しめられている

    冷戦体制の終結は国際社会における経済・社会開発の問題に目をむける大きな機会だった.しかし国際開発協力に向けられる資金は,近年むしろ減少傾向にある. 先進国が過去の約束を無視したり,開発協力を国際協定の場から遠ざける傾向が最近目立っている.そして新たな条件を突きつけては,途上国の長期にわたる発展計画を歪め,混乱させている

    市場原理に基礎を置く開発理論(ネオ・リベラリズム)が出現し,開発へ向けた努力はプライベート・セクターのほうに集中している.国家の役割は無視され,邪魔物あつかいされている.

    豊かで強力な国が,「自由貿易」の名の下に一方的な条件設定をおしつけるのを認めることはできない.彼らの言う「自由貿易」とは,彼らの優位性を保持しようとするための論理であり,途上国の事情を無視し,国内のシステムを破壊して侵入するための論理である

    とりわけLDC(低開発諸国)について注意を喚起したい.アフリカに集中していLDCの諸問題は貧困と不正によってもたらされている.それは克服されるどころかますます進行している.国内における貧富の差をなくすことなしに紛争は解決できず,その為にはLDC諸国が持続的な経済成長を維持することがもっとも大事である

  • 首脳会議の国際アピール

    このような状況を克服するためにどうしたら良いのか,首脳会議は次のような方向を考えています.まず会議はこのような経済困難が,人道的な問題を引き起こしていることを指摘し,人類の英知によりこれを解決することが求められていると力説します.とりわけ1990年に合意された「LDC諸国のための行動計画」を全面的に実施することの緊急性を強調しています.

    第二に,途上国の経済困難を放置するならば,それが政治的不安定さとなって爆発する危険性を訴えます.

  • 世界経済は一方がますます富み,他方が貧困化することによって脆弱化している.警戒すべき量の富が数少ない人たちの手に握られている.それは無制限な市場経済の結果もたらされたものであり,社会の不安定さの要因となっている. さらにネオ・リベラリズムに基づく経済施策が途上国に深刻な緊張を与えている
  • 会議は第三に「途上国の経済が好転することによってもっとも恩恵を蒙るのは先進国である」とし,純粋に経済的な意味からも途上国の生産力向上が人類にとって有益であることを訴えます.

    そして今後あるべき国際関係の基準として「建設的な対話とパートナーシップ」という考えを打ち出します.それは相互利益と,責任分担,真の独立の立場をもとに新しい国際秩序を打ち立てようとする提起です.ただそれは「次世紀に続く課題」であるとされ,目下のところは「北の諸国が対話を進めることを希望する」と述べるにとどまっています.

     

    非同盟運動の戦略

    まず会議は以下のような原則を確認しました.独立,領土保全,国家の尊厳,全面軍縮を有効な国際管理の下で行うこと新旧植民地主義や外国の支配,占領,から脱却し民族自決を目指す人民の権利,国家間の平等,国際法の完全な尊重,社会・経済の発展,公平な国際経済秩序,人的資源の開発,すべての人権と自由の保護・育成,発達する権利などです

    そしてこれらの目標を達成するため,新たな世界のリアリティーに適応した大胆な戦略,発想,計画を考えるべきだとします.

    7項の最後に短く,しかしはっきりとそれは打ち出されています.「非同盟諸国首脳会議は,すべての途上国が連帯することが重要であるとの合意に達した」

    このことは,会議がインド・パキスタンの核開発,コンゴ紛争をめぐる諸国間の対立などで混乱した中での最終文書ということを考えれば,きわめて貴重な合意です.

    経済困難を国際政治の場で解決していこうと考えるならば,途上国の団結と連帯は絶対に不可欠の条件です.先々の民主的な南北対話はさて置いて,とにかく国際的な機関の場で,途上国が一丸となって先進国とぶつかり合う以外に当面の活路はありません.とくにIMFやWTOなどの国際機関が,先進国の政策押し付けの舞台となっている状況の下で,これらを民主的に改組していく課題は重要です.

    会議はすべての途上国が団結するという前提の上で,「先進国との開発援助交渉を個別交渉にとどめず,国際的に位置づけ,共通の立場で臨むことを強く提起」しています.要するに団交に持ち込もうという戦略です.

    かつて1985年,中南米を中心に債務国が団結して先進国と交渉しようという動きがありました.アメリカもベイカー構想やブレイディ構想などで,債務国の一斉モラトリアムを避けようと必死になって工作しました.

    つまり「団結した途上国」の最大の武器は「失うものは何もない」という事実です.これこそが先進国にとって最大の恐怖です.しかしこの時は一部の国の抜け駆けや,全メンバーの合意を得ない過激な戦術をとった国が自己破産するなかで,債務国連合の構想は崩壊していきました.またラテンアメリカ諸国が債務にあえぐ中,東アジア各国は空前の投資ブームに沸くという,非同盟諸国内の事情の違いもありました.

    それから10年を経た今,途上国の団結を実現する場はどこにあるのでしょうか.非同盟運動は,国連こそその場だと強調しています.なぜなら国連憲章には,「その原則として民族の尊厳,領土の統合,自決権,内政不干渉などが含まれている」からです.すでに数年前の総会報告でも指摘したように,非同盟諸国が強調してきた「国連中心主義」は,安保理偏重の「ガリ構想」やアメリカの安保理利用策動によって著しく傷つけられました.国連の中でも最も重要な機構である国連総会の権威は,この間著しく弱体化してきました.最終文書は次のように述べています.

  • 国連の最高意思決定機関である国連総会が力を強化し,ふたたび活性化することは重要である.総会ではすべての加盟国が平等であり,安保理であろうと事務総長であろうと無視できない.総会の権威を弱めようとする試みはいかなるものでも受け入れることができない
  • 以上の点を踏まえた上で会議は非同盟運動の任務として以下の点を提示しています.

    (1)非同盟運動の目的は加盟諸国の平和,福祉の向上に寄与することにある.運動はとりわけグローバリゼーションに対し団結して,有効に対処しなければならない.また国際開発協力に弾みをつけるためにも,南―南協力が急がれる.

    (2)非同盟諸国は,さまざまな国際機関とりわけ国連の強化のために協力しなければならない.そして途上国の意見を国連に反映させなければならない.

    (3)会議は,軍事的・経済的手段を用いて一方的に政策を押しつける力の政治や覇権主義に対し,一致して反対の意思を明らかにする.そして民族の尊厳,独立,領土保全を擁護するべきだと主張する.

     

    各論

    【はじめに】

    まず弁解です.各論はほとんど書けませんでした.理由は二つ,国際経済・金融論が分からなくて苦労したこと.もうひとつは非同盟諸国首脳会議の最終文書の訳出に時間を取られたことです.

    韓国とインドネシアについてのみ触れておきたいと思います.ただしこれらの国については私よりはるかに有能なエキスパートがいるので,別途補足していただきたいと思います.

     

    韓国

    97年初頭の歴史的なゼネストの後,韓国政治は大きく動いてきました.ゼネストの直後に発覚した韓宝疑惑で金泳三政権は事実上失脚.権力の空白状態が続く中で経済危機が一挙に深刻化.12月にはついにIMFの援助を要請.財閥企業や銀行などが次々倒産する中,かつてkCIAに拉致され命を失いかけた金大中が奇跡の復活.その金大中がIMFのコンディショナリティーに伴なう緊縮政策を次々と実行.現代自動車を中心とするゼネストはついに不発に終わり,民主労総も整理解雇制を受け入れ.ウォンは複雑な動きを見せるものの,失業率だけは着実に増加.ついに200万人を突破し,全労働人口の10%に迫る.さらに来年にかけて増加の見込み.円安日本に負けた対米輸出は一向に伸びず,対ロシア貿易も肝心のロシアがずっこけ,増えるのは日本の観光客だけ.

    これが数年前まで8%を超える成長率を誇り,OECD入りを果たすなど肩で風を切っていた韓国の現在の姿です.

    このような状況を一言でいえば,開発独裁=財閥中心型政治・経済システムの破綻です.

    日本の対米迂回輸出が円安で成立しなくなったとか,人件費を含むコスト高とか,短期資金の一斉引き揚げなどから説明することも可能ですが,やはり経済をもっと政治に引き付けて考えておくべきと思います.

    1987年の民主化大闘争以後,韓国には民主主義の流れが一挙に広がりました.しかし反共法が依然として残るなど政治的民主化もまだ不十分で,経済的民主主義はそれ以上に遅れています.

    もともと1965年に朴独裁政権が日韓条約を結び,賠償金を用いて経済を急成長させました.その後はベトナムに派兵するなど特需景気に沸き,さらに対米迂回輸出をねらう日本の資本進出で大規模な設備投資が行われ,重厚長大産業では日本をしのぐほどになりました.

    これらの経済発展は軍事独裁政権の下に統制され,その庇護の下に多くの財閥が形成されました.いわゆる慶州マフィアです.全企業の1%足らずで50%を超える物資が生産され,十大財閥がGNPの20%をしめる状況は明らかに異常です.

    この産軍複合体は,実務能力よりも地縁・血縁が重視されるネポティズムの世界であり,資金の多くは設備投資や技術開発よりも賄賂にまわされます.このしくみは「民主化」以降も手付かずに残っています.たとえば金泳三大統領に賄賂を贈った「韓宝」は,多額の政府融資を受け韓国第14位の財閥に急成長したのです.

    足腰を鍛えずに濃厚飼料で肥え太った韓国の企業には致命的な弱点があります.企業の競争力の基礎となる技術力の低さです.例えば自動車産業では,エンジンなど核心部品の対日依存度は90%を越えているといわれます.労働力の質も問題です.韓国の義務教育は非常に遅れており,貧困者が高等教育を受ける機会はきわめてかぎられています.たしかに10年間で賃金は二倍化しましたが,日本の1/4,貧富の差は大きく一般労働者の生活水準は悲惨なものです.さらに劣悪な福祉,日本の2.5倍という高地価が生活苦に拍車をかけています.(韓民統資料による)

    これらの構造的脆弱性の上に,いくつかの外的要因が重なって今回の経済危機をもたらしたといえます.したがって危機の脱出には財閥の解体も含めた抜本的な改革が必要でしょう.金大中は五つの銀行を強制整理,財閥の企業間持ち合いをインサイダー取引として摘発するなど,IMFの外圧も利用しながらかなり思いきった経済改革に着手しています.今のところ国民の支持も失ってはいないようです.しかしこれからが不況の本番.政治的民主化をさらに進め,労働者のみならず多くの国民が大規模に組織化され,その力に依拠しながら改革を進める以外,金大中大統領に残された選択肢はないでしょう.9月訪日の際,金大中が共産党の不破委員長に「お互い協力していきましょう」と言った言葉にはこのような意味が含まれていると思います.

    昨年末,大統領選を前に左翼政党作りを目指し民主労総などを母体に「国民勝利21」が結成されました.「国民勝利21」は民主労総の前議長の権氏を大統領候補推薦,一定の票を獲得しました.その「国民勝利21」が呼びかけて4月に「全国失業者同盟」を結成しました.結成宣言では失業者代表が参加する失業対策機構をつくること,財閥解体など経済民主化の実現,週 40時間労働、不当労動行為の処罰強化,10兆ウォンの失業手当支給 などを要求しています.今のところこの組織の規模や背景,金大中大統領との関係など不明ですが,初めての市民レベルの政治組織として今後が注目されます.

    参考までにインターネットで拾った不況状況を転載させてもらいます.

    業界 状況
    家電 三星-LG-大宇の大手家電会社は低価格型モデルを開発し、不況脱出を企んでいる.

    しかし深刻な販売不振に陥っている。
    TV-洗濯機-冷蔵庫主要製品の販売量が昨年より約 3540%ずつ減少した。

    よって国内内需用製品生産ラインの稼動率が昨年の88%で、今年 64%
    大宇電子は
    "輸出用製品ラインだけ90%以上稼動している"と話す。

    自動車 現代-大宇-起亜等の国内自動車3社の平均稼動率は40%にすぎない。
    4月から工場稼動率は30%水準まで落ちた。昨年平均稼動率は72%
    今年自動車の内需販売は昨年
    (151万台) より 50%程度減少した90万台まで減ると憂慮。
    現代自動車蔚山工場は生産ラインの職員を清掃や草むしりに動員している状態
    (T_T)
    先月からは一ケ月平均 1200名の職員を集団で休暇にしている。
    建設業 この業界の不況が内需減退に決定的な影響を与えている。
    各種不動産景気浮揚策にも
    拘わらず, 深刻な不況から抜出すことができない。

    商業用及び工業用建設投資も非常に悪い。

    今年に入り 3月までに国内建設受注額が前年同期比24.5%減少した.

    1分期中の建築許可面積も 22.9%減少した。
    特に地方経済が大打撃を受けている。今年の下半期にも建設景気沈滞
    が続く見込み。

    流通 デパートや市場等流通業界が深刻な不況に陥っている。
    セール期間中にも売上げがむしろ減っている。
    ロッテデパート本店の場合、今年に入り売上げが昨年より
    10%以上減っている.

    現代デパート本店も昨年より10%近く減った。

    不渡を出したニューコアと美都波、ブルーヒル各百貨店の売上額は昨年に比べて3050%近く落ちた。

    衣類業界では "半分以下に売上げが急減して5年分程度の在庫衣類が倉庫に積まれている

     

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